美容師 技術 若い美容師さん達にどうしても伝えたいこと
はじめに
若い年齢を過ぎて少しはキャリアを積んできて、ふと、美容師にとっての本当に必要なスキルとはなにか。どんなことが美容師として備わっていることが大事なのか。
若くて才能があるこれからの人の為に、または今仕事が出来なくて悩んでいる人の為につたえたいことを書いていきます。
何を核にするのか
よく美容師の世界では技術とセンスが大事と言われますね。
お客様の要望を捉え、きちんと具現化する技術力と、それを似合うように似合わせるセンス力。
少し、自分が若い時の話をします。
アシスタントから始めて、スタイリストつまりカットをする技術者になるにはそれぞれの道のりもあるけれど約2〜3年。
自分は率先していろいろ教えてくれる先輩がいたので、「1年でスタイリストにならせてやるよ」と言われ、実際に1年でお客さんの髪を切れるようになった。(でもこれは人それぞれであるから、何年でなったかとは別にどうだっていい)
技術はまぁ一生懸命練習もしたし、わりと器用であったからすんなりと切れるようにはなった。
でもセンスという壁にすぐにぶち当たった。まんま教えられた通りに切れて、カットのベーシックはできるのだが、それをお客様に似合わせることが出来ない。
つまり技術はいいのだがセンスがない美容師というのがすぐに自分に定着した。
でもよくよく考えたら、そもそもセンスってなに?センスがある人ってどういう人?って自分で相当に考えた。
いろいろな人のカットの本を読んで勉強したり、カット講習にいったり同じ店の人の技術をみたり。
でもいまいち何かつかめないし、改善もされない。逆にあまり技術がない人でもセンスがある人は自分よりお客さんを獲得していたし、正直羨ましいなと思っていた。
あげく身内からは「スタイルにセンスないよ」って言われて、どうしようもなく悔しくてイラだって道具をめちゃめちゃに投げたこともあった。
もちろん、そのあいだもずっと仕事はしてきているし、自分を支持してくれる人もいて、それがダメだから美容師としてダメだったっていうわけではない。
でもなんとなくセンスがないってのはやだなって思ってた。
そうして、何年してからだろう。10年ぐらいかな。
切る人切る人に喜ばれ、以前のように、お客さんの要望したスタイルがその人に合わなくて、顔が曇るということがなくなった時期が来た。
それは突然に。
なんとなく自分に降りてきたって感覚があって、うまく言い表せないんだけども、一生懸命に向き合う中で、今までとちょっと違うところから切ってみようと考えてチャレンジしてみた。
それが上手く自分にハマったというか、なんとなくしっくりくる感じがした。
それからはもうあっけなくセンスというものに悩むことがなくなった。
自分で切ってても、「あ、これ今めっちゃこの人に似合った」って思うことが増えていって、今では毎日毎日似合わせることができて。
やっぱ自分がいいって思うことと、お客様がいいって思うのって同じだなってつくづく思った。
だから駆け出しでセンスがどうこう言われていて、お客さんの反応が良くなかった時って、多分自分もおんなじこと思ってたんだよね。
切ってはみたけど、結局これでいいのかな…って。
だからそういう風に、過去の自分を追い越して振り返る中で、伝えたいことは、
一生懸命にスタイルに向き合って、一回一回何が良くて何が悪かったのかをしっかり考えて、世の中で良いと思われるものをたくさんみて覚えていけばセンスって意外に簡単にも習得できるってこと。
よく、センスを磨く為に美術館いったり映画をいっぱいみてというけど、それを見たからって今急に何かが変わるわけではない。(自分でそれを証明してる)
それを長い時間をかけて、見て覚えて、蓄積させていくことで自分の中にセンスが磨かれていくんだと思う。
だからそれをやり続けること。
そして、一生懸命向き合って努力しているとそのご褒美にポッと授かることなんだとおもう。
なんか空想的な話になって申し訳ないが、実際に自分が体験したことをそのままにあらわすとこうかな。
だからもし、自分にセンスって備わるのかな、自分には出来ないんじゃないかなって思っている人がいたら安心してほしい。
必要な努力をかさねていけば、必ずお客様に髪型を似合せることができるようになるから。
なんでも真摯にひたむきに向き合うことが一番大切。
センスというものに関して伝えたいことはこのこと。
カット技術
自分は若いときに基礎を徹底的に練習したおかげで苦手なスタイルはほとんどない。
これだけは練習してきた賜物であるから少しは自分のことをほめてあげたい。
では、苦手な分野を作らない為には何をすればよいか。
それはカットの技術の原理を理解すること。
この道に入ればカットの原理が大切だからカットの原理を理解しろって散々見聞きすると思うが、ではカットの原理はなにか。
L(レイヤー)とG(グラデーション)の構造と
オーバーダイレクションの原理を覚えること。
これに尽きる。
頭という歪な球体に対し、どこの部分をどんな切り口でどういう角度にして切ってあげるか。そしたら重力で落ちた時にどこにどうかぶさるか。
このことを理解する。
レイヤーとグラデーションは知ってると思うが
その言葉はLとGというアルファベットに置き換えた方がいい。
レイヤーやグラデーションという言葉はカットスタイルをそのまま思い浮かべしまうからだ。
そしてカットとは、LとGがお客様の頭でどのように組み込まれるか、たったこれだけのことなんだ。
オーバーダイレクションは前後に引いて段差や流れをつけるもの。
つまりこれもLとG。
これがわかればどんなスタイルだって切れる。
今、巷には色々な技法やうんちくがひしめいている。
自分の若いときからそうだったんだから今はもっとあるだろう。
もちろん、いろいろな技法やベーシック、セオリーがあっていいと思う。それがあっていろいろなことを勉強できるメリットもある。
しかし、溢れすぎて情報がたくさんあると、何をやっていいかわからなくなるのは本音ではないだろうか。
みんな自分の技術を広めたいし、そこには利益も絡んでくる。
だからそれはいろいろでいいし、否定なんかしたらいけない。
しかし、本当の原理を知ればあとは自分で発展していける技術こそみんながはじめにトレーニングしなけらばならないことだと自分は思う。
自分の核になっていけるものを本当は教えていかなければならない。
今は亡くなってしまったが、植村隆博さんという東京でご活躍した美容師がいた。
カットの技術の正確さとスタイルにおける抜群のセンスのよさ。なにより教育に対する考え方にすごく憧れてセミナーにいったり本を買ったり。ほんの一瞬だが私物のシザーを使わせていただいたこともある。
その技術とセンスには脱帽されるばかりだったが、以外にも若い時にセンスにつまづき思い悩んだ時期があったそうで、そういうところに自分がすぐにシンパシーを感じて勉強が始まったのかもしれない。
それまでにあったカット論に疑問を感じ原理を習得してそこから自分が発展していくこと、自分が成長していけることの重要性を説いていた。
そして、この本にLとG、オーバーダイレクションの原理がかかれていて、それを若いときに勉強させてもらったことが今自分の1番の大きな財産になっている。
(残念ながらリンクを貼り付けることができない為、ご紹介することができないが、興味があったら調べて本を購入してみてほしい)
本当に感謝してもしきれないので、世の中にこの原理を広めたいと願っていた植村さんの考えを自分の周りに自分なりの方法で伝えていきたいと思っている。
それは自分が若いときに1人の偉大な美容師に
助けられたみたいに。
なんのために美容師をやるのか
そしてここからは美容師という仕事の意味について。
今まで数々の美容師をみてきたがハッキリ言うと、上手くない人達というのにも相当見てきた。
上手くない人達とは総称してお客様の期待にうまく答えられていない人という意味。
技術が無い分、トークでごまかしたり、お客様から直しを指摘されてもこの部分を切るとおかしくなりますよといった言葉でなんとかその場をやり過ごす。
決して上手くないのではない。
そのお客様を良くしてあげようという気持ちが欠けているのだと個人的には思う。
お客様が無難な簡単な髪型を提案して、波風立たない仕事をして、ホッとしているようでは、何の為に美容師になったのかわからない。
本来ならばお客様から提案されて簡単であればあるほど、逆になんの感情も湧くことはない。
ハードルが上がればあがるほど、自分はこのお客様からすごく期待して頂いているのではないかと感じる。
お客様の提案があがるほど、やりがいを感じてそこに大げさかもしれないが真剣勝負というのが生まれる気がする。
そうであった方がいいし、そうである人が増えてほしいというのが正直な気持ち。
そして、それが成功すり時もあれば失敗に終わるときもある、それはその時の流れ。
だからそれで一喜一憂することはないけど、もちろん失敗することだってある。
失敗というかお客様が求めていたことと
こちらが切ったスタイルにズレがあったときの
お客様の不満。
でもそれがあるのはしょうがないと思う。
いろいろな人が居ていろいろな考えがあるから、合う合わないも出てくる。
だから自分がその人の為に一生懸命にやれたという事実が大事なのではないかと思う。
私の好きな言葉でトライ&エラーというのがある。
トライ、チャレンジして失敗を繰り返す。
その繰り返しが人を成長させるのにもっとも役立つ方法だと自分では思っている。
どんどん失敗して、その都度いろいろなことを学び学習すればいい。
それが積み重って降り積もって、自分に蓄積したときに、このお客様はこういう風にやってあげると満足を引きだしてあげれる、といったものが自ずとわかってくるんだ。
そうなってくるとこの仕事は本当に楽しいし
やめられなくなる。
ただ、ダメなのはトライしないこと。
チャレンジしないこと。
これが人の成長を止める。
何故か。
トライしていかなくて、無難なことをやっていては何がよくて何がダメなのか何もわからないからだ。
これを知った人と知らなかった人では積み重ねが天と地の差が生まれる。
だからバカにされても笑われても、ひたむきに練習してチャレンジ、トライし続けていけばいい。
それできっと成長に繋がる。
しかしそこには毎回の学習は必要だ。
同じ失敗を繰り返すのは2流というか、成長できる見込みは無い。
毎回毎回の何が良くて何がダメだったのかを自分の中にしっかりlearningしていく。
そうすれば必ずいい方向にいくし、お客様を
満足させられる、お客様から期待をしてもらえ
る技術者へとなっていけるはずだ。
最後に
若くて才能ある若者たちに世の中は期待している。
なにより、たくさんある職業の中から美容師を選んだ貴方達は同じ職業を持つものとして、本当に嬉しいし誇らしいし頑張ってもほしい。
美容師ってお客様の喜びや幸せがダイレクトに自分に届く仕事。
やってもらってスッキリしたよ
この前の髪型すごく褒められたよ
貴方にやってもらう為に来たよ
あげればキリがないくらい、普段の仕事からお客様からの感謝の言葉をいただける。
本当に素晴らしい仕事だなと思える。
でも綺麗事ばかりではない。なんの仕事でも言えることだが、厳しいこともあるしそれをあげればキリがない。
こんなことを書いてる自分も、今でもお客様から叱責され喝を入れその度に考えさせられている。
でも味があっていい。人間味に溢れている。人と直接関われるってやっぱり素敵なこと。人生、山あり谷あり。陽と陰。
そういう人生において味のあることをしっかり味わっていく為には、しっかり基礎基盤を自分に固める為に行動することが大切。
このことを1番につたえたい。
技術とセンスを磨いていけば、人生の大きな財産になるし、人間としての豊かさを得ることができる。
それはいままでもそしてこれからも。
最後は自分に言い聞かせて。
ありがとうございました。